SPAC高校演劇フェスティバル、無事終了しました。ご観劇いただいた皆さん、どうもありがとうございました。関係者の皆さん、お疲れ様でした。

静岡県立富岳館高等学校『堕天使』は、昨年の三島由紀夫『弱法師』とはうってかわったテイストになっていて、その意欲の高さを買いたいと思いました。男1と男2のコンビが楽しく、キャスティングで楽しませてもらえた作品でした。日本で唯一成功した『ゴドーを待ちながら』は、星セントルイスが主演したものだとよく語られていますが(ほとんど伝説になっているわけですが)、こういう方向性は「不条理演劇」の解釈として間違っていないですね。モノトーンの衣裳も装置とマッチして、とてもよかったです。真っ黒なコロスもかっこよかったです。

そして、静岡市立商業高等学校『黄色いパラソルと黒いコーモリ傘』は、「さすが真打」と呼びたくなるような、貫禄を見せつける作品でした。偽物の不幸というスパイスを弄んだがゆえに、女が自殺し男が取り残されるという本当の不幸(あるいは、悲劇的結末という、究極の愛の完成形)に陥る男女の物語ですが、市商らしいチームワークで、高校生が演ずるからこそ嫌味にならずに描ける、大人の愛の物語に仕上げていました。綾乃ちゃんとアンジーくんの市商ラストステージでしたが、それに相応しい、大変完成度の高い感動的な作品だったと思います。一観客として楽しみました。

市商の皆さんにひとつだけ忠告があります。関東大会に出場できる技量を備えた以上、戯曲の選定にさらなる手間隙をかけるべきです。『はなまぼろし』も悪くなかったと思いますが、現在の自分たちに引き寄せられるテーマを備えていて、市商の長所を活かすことができて、かつ、全国大会が狙えるような、レベルの高い戯曲はいくらでも存在するはずです(もちろん別に全国大会なんて狙わなくていいのですが:笑)。芝居の勝負なんて、ぶっちゃけ、戯曲の良し悪しで7割方決まってしまうものなので(演出家としてはあんまり認めたくないんですけど、そんなものです)、技量があるだけにそこはサボッちゃいけません。読書が苦にならない文学少年、文学少女を味方につけて、よりいっそう精進して下さい。