私は常々、日本の文化芸術に関して、東京一流・地方二流以下、という図式を崩す必要があると考えてきました。私自身、別に東京で挫折したから地方に移ったというつもりは毛頭なく、むしろ地方に身を置く方が面白いことができそうだと感じたから移ったのであります。しかし、文化芸術の東京一極集中を解体するのは、口で言うほど簡単なことではない。東京に負けないものを、地方の人間が実際に創ってみせねばならないわけですが、ただその際、東京で評価されるようなクオリティを目標としてしまうと、元の木阿弥です。地方の創作家は、その地方に根づいた価値観を一段引き上げるようなクオリティを目標とすべきでしょう。
というわけで、地方人の・地方人による・地方人のためのアートを、とりあえず「コミュニティ・アート」と規定したいと思います。「しょせん田舎だから」「しょせん二流だから」「しょせん素人だから」という卑屈な自己規定を食い破る、パワーのある文化芸術活動を各地で同時展開することが、これからの日本社会全体の活性化につながるものと私は信じます。そのためには、既存のカルチャーセンター的な活動の枠組みを乗り越え、これまでにないバイタリティのある活動を始めねばなりません。子供も若者も中年も老人も、みんな一緒にやるのです。文化芸術という領域で、お互い優しく労わり合うのではなく、激しく魂をぶつけ合うような戦いをやるのです。そこで形成される人と人とのつながりこそ、地方分権の時代にふさわしいコミュニティの新形態となるはずです。いやしくも芸術家や芸能者のプロを自称するほどの人々は、そこでリーダーシップを発揮して下さい。重鎮の方々も、家元制度によりかかって安穏としている場合ではありません。自分の弟子だけではなく、地域全体のために働いて下さい。
招聘されてやってきた東京の芸術家が、その地域を気に入ったというのなら、では定住する気はないかと本気で迫るべきです。ふらりと現れふらりと去るスナフキンのような風来坊は、刺激はくれますけれど、それでは地域を変革する主体にはなりえません。それでは一過性のお祭りしか成立しません。その地域のいいところも嫌なところも両方呑み込んで、地域の人々と腹を割ったつきあいができるようになって、ようやく地域に根ざした本当の芸術活動が始まるはずです。だって喧嘩のひとつもしなけりゃ、本当の友情にはならないでしょう。ただし、地方で食える芸術家はごく一握りですから、これは過当競争ではあります。しかしこれからは、過当競争に敗れた芸術家が、東京でボヘミアンを気取ればよろしいのです。いつまでも若者の感性とやらを追いかけて、地に足のつかない生き方をしていればよろしいのです。かくして、東京一流・地方二流以下という図式が逆転する、というのが私の目算であります。時代は常に動き続けており、私は私なりに状況の変化を追いかけて、ここまで来ました。これからも前進あるのみです。
前置きが長くなりました。かくして「コミュニティ・アート」を活性化する作戦を、これからあちこちで展開していきたいと思っています。その第一弾となる実験を、はままつ演劇人形劇フェスティバル2010のオープニング・イベントとして、浜松の文芸大でおこないます。無料ですから、ぜひいらして下さい。他県の皆様にも参考になる内容だと思います。よろしくお願いします!
はままつ演劇人形劇フェスティバル2010オープニングイベント「はままつコミュニティ・アート見本市 ~地域が奏でるドラマ~」
【日時】2010年10月8日(金)18:30スタート
【会場】静岡文化芸術大学 1階東165総合演習室
【出店者】
演劇:布施祐一郎(劇団からっかぜ代表)
人形劇:八木邦雄(浜松市人形劇協会会長)
路上演劇:里見のぞみ(路上演劇祭Japan in 浜松 実行委員長)
音楽:鈴木建也(やらまいかミュージックフェスティバル実行委員長)
映画:榎本雅之(シネマ・イーラ支配人)
美術:特定非営利活動法人クリエイティブ・サポート・レッツ
写真:浜松写真連絡協議会
進行:大岡淳(演出家・批評家)+えん(生活芸術家)
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