劇団犯罪友の会(http://www.yo.rim.or.jp/~hgcymnk/hantomo/)首魁、武田一度さんから電話をもらう。このあいだ心斎橋ウイングフィールドでやった公演「手の紙」の評判は耳にしていたので、観に行けなかったのが非情に悔やまれますと伝えたところ、なんと来年の5月に新宿タイニイ・アリスで上演することが決まっているとのこと! 「ビデオ送ってもええけど、どうする?」「いやいや、東京で生で見られるならビデオは見ません」ということで、来年までのおあずけである。「手の紙」は、1961年12月に起きた三無事件をモチーフとした物語なのだそうだ。三無事件というのは右翼によるクーデタ未遂事件で、戦後、破防法が適応された唯一のケースらしい。見てないから何もわからないが、ドストエフスキーの「悪霊」がコミカルになったような芝居なのかしらん? ああ来年の東京公演が待ち遠しいな。
私は、今の日本の演劇界で本当に優れた演出家といえるのは、犯罪友の会の武田一度、日本ろう者劇団の米内山明宏、そして劇作家の岸田理生の3人だと密かに考えていたのだが、理生さんは他界してしまった。3人とも全共闘世代=アングラ第2世代と括れる人たちだ。唐十郎・寺山修司・鈴木忠志・太田省吾など、アングラ第1世代の演出家たちが良かれ悪しかれ強固な様式を確立して俳優の身体を従属させたのに対し、この第2世代の3人が俳優を指導する方法論にはもう少し緩やかな振幅がある。この振幅が、俳優に柔軟性を与え、内発的な力を引き出すことに成功していると思えるのだ。若い俳優にとって有益なのはこっちだろう、と私は確信しているのだけれど、こんなことを考えているのはたぶん日本演劇界で私ひとりである。演出家の視点と批評家の視点とをクロスオーバーさせるとそういう結論になるのだけど、わかるかなあ。わっかんねえだろうなあ。