本日は20時開演です。大岡も観にいきます。

23日(木祝)は15時開演です。終演後、大岡がアフタートークに出演します。またこの日は、バラシの後、会場で打ち上げがあるそうです。

当日パンフレットに掲載してもらった挨拶文を載せておきます。

どうぞお見逃しなく!

 

帝国の解体に備えて

大岡 淳

 既に、SPACで文芸部スタッフ、月見の里学遊館で芸術監督、静岡文化芸術大学で非常勤講師として働いてきた私は、今年5月に本格的に引越しをして、とうとう静岡県民となった。そして、定住すると決めたからには、職場の肩書きを外して、改めて静岡の観客の皆さんと出会い直さなければならないと思った。元来は無手勝流の小劇場の出なのだから、たまには原点に帰る必要があるだろう。原点に帰った作品を創造し発表し、改めて静岡の観客の皆さんに認めてもらうことができれば、自分が静岡で仕事を続ける資格も得られるだろう――そんなことを考えて、新作戯曲の書き下ろしをやらせてほしいと、私から劇団渡辺の面々にお願いをしたところ、快諾が得られた。かくして、今日この公演が実現した次第である。

 テーマに選んだのは、ずばり「現代を描くこと」。では「現代」とはどんな時代か。即座に頭に浮かんだのは「世界帝国による統治が解体過程に入った時代」ということだった。「帝国」とは、言い換えれば覇権国のことである。現在の世界情勢において、覇権国といえばもちろんアメリカ合衆国であるが、ただ私としては、具体的な一国家の状況よりも、覇権国を中心とした世界秩序における、支配―従属関係の諸相を描いてみたかった。それには、時間経過の中で出来事を進行させる「帝国の物語」ではなく、時間を固定して、その瞬間どこに誰がいて何をしていたかを次々にスケッチする、「帝国の地図」というような構成がふさわしい。そして「物語」ではなく「地図」だとすれば、それは散文的ではなく詩的な形式で綴られるべきだろう……。

 「地図」でふと思いつくことだが、私は出不精ではあるけれども、それでも気がつけばこれまでに、フィリピン、タイ、カンボジア、台湾、香港、中国、韓国、ロシア、フランスを訪れている。観光で行くことも仕事で行くこともある。香港は大のお気に入りで何度も出かけているし、タイとフランスにはそれぞれ1ヶ月ずつ滞在した。また、日本を訪れる海外の演劇人たちとは積極的に交流するよう務めてきた。こういった経験が、この戯曲にいくらか影響していると思う。この戯曲に日本社会が描かれているとしても、それは飽くまで“世界の中の日本”である。日本の特殊事情と見えるものの多くは、実は世界中で普遍的に生じている事例の一つに過ぎない。そのような感覚が、この戯曲の全体を貫いていると思う。

 ローマは1日にしてならず、と言うが、帝国の衰退もまた、1日で完了するわけではない。私たちはこれから、長い年月をかけて衰退過程を生き抜かねばならず、その過程は波乱に満ちたものとなる。来年はおそらく、とんでもないことが起きるだろう。対岸の火事だと割り切っていた事態が、いよいよ個々人の生活を直撃する。そんな2011年が到来しても、しっかり自分の暮らしを守り、たくましく生き延びられるように、今のうちに皆さんの精神に渇を入れておきたい。そういうおせっかいな気持ちで、この戯曲を執筆した。そして劇団渡辺の諸君が、さらにそのポテンシャルを増幅させ、戯曲を超えた世界観を皆さんにぶつけてくれるはずだ。さあ、芝居が始まる。