10月29日・30日と、神田古本まつり・神保町ブックフェスティバルに連動して実施したイベント「テクストの祝祭日」が無事終了いたしました。御来場いただいた皆様に御礼申し上げます。

29日に上演した坂口安吾・作「私は海をだきしめていたい」の感想をこちらで頂戴しました。

http://d.hatena.ne.jp/saitohswebpage/20051029#c

saitohswebpage さん、どうもありがとうございました。

反省点としては、この「テクストの祝祭日」は寸劇とトークセッションを連動させたイベントであり、主催者の尽力により広報も行き届いていたにも関わらず、どうも「本好き」の人々には、少なくとも芝居の方はアピールせず、観客が集まらなかったということがある。小説家のファンの心理からすれば、安易にテクストをねじまげた上演など見たくない、ということなのかもしれない。ただ、私としては「芝居好き」も「本好き」も、そんなに人種としては食い違わないのではないかという読みがあったので、この点、ちょっとショックであった。90年代以降に進行している、宮台真司言うところの「偶然性の高まり」=文化のタコツボ化は、「本好き」の精神をも侵食しているということだろうか。「宮部みゆきトークショー」みたいな企画でなければ、やっぱり人は集まらないのか。あるいは、企画の立て方をもっと工夫すれば、マイナーな内容でも「本好き」をひきつけることは可能なのだろうか。そのあたり、次回があるとすれば検討課題ということになろう。

芝居の中身については、坂口安吾の方は「大岡の演技がひどいので女優さんが可哀想だ」と各方面からお叱りを受けたが、横光利一の方はけっこうウケていたので、一安心である。今回は座組が非常に良かったので、本番の内容も良かった。打ち上げも面白いメンバーが集まり、久々に芝居の醍醐味を味わった気がする。ついでに、毎日稽古が終わるたびに、東十条の「ちりめん亭」で食べた野菜餃子の味が忘れられません。楽しかったな。

横光利一・作「幸福を計る機械」の本番を観ていて、ようやく私の演出も「お客を楽しませる」という基本中の基本をクリアできるようになったな、という感慨を抱く。良い俳優を集めることができるようになった、と言っても良い。本来、この先に「やりたいことをやる」という段階が来るはずで、20代で「やりたいこと」ばかりやりまくった私の演出歴は、たぶん転倒していたのだ。今さらそんなことに気がついた。ともあれ、まだまだこれからである。