SPAC高校演劇フェスティバル2011が、無事終了しました。SPACが高校の演劇部に、上演戯曲を指定し、演技指導・演出指導・技術指導を施し、上演会場も提供するというなかなか贅沢な企画です。おそらく、日本の高校演劇指導の最高峰に位置するイベントだと思います。今年は、ソーントン・ワイルダーの一幕劇を上演戯曲に指定しました。共通装置は、下手奥の簀子から舞台面の上手中に流れている100mのロープ1本で、しかもこのロープの形状を上演中に変化させねばならないという、大変難しいお題が課されました。

●静岡県立静岡東高等学校『フランスの女王たち』個人的には、好き嫌いで言えば、この芝居が一番好きでした。ブルボン王朝の末裔がアメリカに渡ったという伝説を題材に、「あなたこそ王家の血を引く方です!」とペテン師に乗せられ、有り金を巻き上げられるおばさんたちのお話。ロープを俳優の体に巻きつける演出が秀逸だったし、リアリズムを脱却した演技もなかなかサマになってしました。とりわけ、ポワントバンさんの成長が著しかったです。

●常葉学園菊川高等学校『ロング・クリスマス・ディナー』この作品を見たくて、今回ワイルダーを選んだと言っても過言ではありません。顧問の井出先生の、詳細を極めた戯曲分析が下地となって、大変重厚な世界を作り上げており、感動的でした。衣裳も小道具も装置も凝ってましたし、演技も嫌味がなく好感が持てるものでした。すがすがしい、という言葉が似合います。最優秀俳優賞と最優秀スタッフ賞を同時受賞したのもむべなるかな、です。個人的にはジャナビーブさんがよかったです。

●静岡県立富岳館高等学校『楽しき旅路』地味だけど、いい話です。計算したわけではないんだけれども、期せずしてブレヒト的な異化効果をふんだんに盛り込んでいた点が愉快でした。T君とY君のコンビも面白かった。いささかファナティックな嫌いのある母の宗教的背景や、結婚した長女が死線をさまよった果てに病床から生還したというエピソードが、もっと鮮明に浮かび上がれば、さらに良い作品に仕上がったことでしょう。

●静岡市立商業高等学校『特急寝台列車ハヤワサ号』ともすれば暗く沈みそうな戯曲を、市商テイストでエンタテインメントに仕立て上げた力量はさすがでした。欲を言えば、アメリカという国の実相にもっと肉迫してもらいたかったという気もします。このあたり、文学的なセンスの必要な作業になりますし、理解の範囲を超える対象にいかにアプローチするかという難題に取り組むことを意味します。そのような志を市商が持つかどうかが、今後のポイントではありましょう。

さてさて、静岡の高校生に続いて、今度は河合塾コスモの生徒たちの番です。3月4日(金)16時から、河合塾コスモ東京校で、三島由紀夫『近代能楽集』から『班女/弱法師』を上演します。大岡もちらっと出演します。お時間のある方はぜひお越し下さい(事前に大岡まで連絡下さい)。