静岡に定住しましたので、河合塾コスモは毎週火・水の2日間に授業を詰め込むことになりまして。慌しくはあるのですが、迂闊に休憩する余裕がない方が、却って能率よく仕事ができるということに気がつきました。そのかわり、朝から晩まで頭脳をフル回転させております。

例えばこのあいだの水曜日。

1限/現代文。今村仁司の文章を題材に、そもそも「近代」とは何か、という本質論。これに絡めて、そもそも歴史区分はなぜ「古代・中世・近代」の3つを基本とするのか、という謎の解明(私の十八番)。ついでに、就業形態の多様化が不登校増大の根本原因である、という持論の開陳。

2限/ボランティアで小論文。T君に、福祉国家の経済的弱点を説明。また、海兵隊抑止力論の論理的破綻について、さらには、普天間問題と金融危機の関係について説明。Y君と、コンビニの深夜営業規制の是非について議論。

昼休み/AO・推薦入試についてのガイダンス。休憩はとれず、昼ごはんはアンパン1個とコーヒー1杯のみ。

3限/小論文。Mさんの書いた短編小説の添削。Iさんと英語小論文に取り組み、標準語/方言というヒエラルキーの虚構性について考察。現代の「方言ブーム」に潜在する権力関係を、サイードの「オリエンタリズム」を概念装置として分析。

4限/「パフォーミング・アーツへの招待」ゼミ。大岡演出作品のDVD上映。ここだけ一息つける時間。シェイクスピアの『ハムレット』とハイナー・ミュラーの『ハムレットマシーン』について解説。

5限/ボランティアで小論文と現代文。看護学科志望のFさんに、男女共同参画の現状を分析する、統計資料読解の方法を伝授。M君と、マンツーマンで石原千秋『教養としての大学受験国語』(ちくま新書)収録の問題を解き、「アイデンティティ」について心理学的に考察し、メタファーとしてのパラノイア/スキゾフレニーについて説明(懐かしい!)。最後に、I君と、無着成恭『山びこ学校』(岩波文庫)収録の作文を味読。

と、毎週こんな感じであります。このペースにももう慣れました。これだけオールラウンドに対応できる予備校のセンセイもそうそういない気がしますが、どうなんでしょうか。といっても、やっぱり私はいわゆる受験屋じゃないですね。自己流で学習し、自己流で思索し、自己流で創造するスタイルが、結果として、予備校だったり大学だったり劇場だったり、様々な場所でニーズに合致しただけでして。もちろん、この専門性のなさは私の弱点でもあるんですが。

今年度は、Iさんに英語小論文対策を求められ、英語の先生にだけ頼っていたら危ういと判断し、20年ぶりに(?!)英語長文読解に取り組んでおります。自転車と一緒で、ブランクはあっても体が覚えているという感じですが、さすがに癖のある文法事項は躓きますなあ。この際、単語だけじゃなくて文法もおさらいしたいところです。毎週、静岡から東京へ向かう新幹線で辞書を引きながら読み、文法上の疑問点を洗い出すんですが、これがなんとも楽しい時間です。