無事本番終了しました。御来場いただいた皆さん、御協力いただいた皆さんに、心より御礼申し上げます。本当にどうもありがとうございました。

私自身が今回の現場に賭けた思いは、当日パンフレットに記載した原稿に書きつくしてしまいましたので、まずはそれを引用します。

 

 静岡で働き始めて4年目になります。この月見の里学遊館でも色々なお手伝いをしてきましたが、いずれ袋井市民を中心としてパワフルな静岡県民を集め、俳優さんに仕立て上げ、プロに負けないような芝居を作り、うさぎホールで上演してやろう!と考えていました。そして、ついにその夢が実現する日がやって来ました。

 演目として選んだのは、17世紀フランスの劇作家モリエールの『ゴリ押し結婚』。古典として現代に残る戯曲ではありますが、ただ正直言って、とりたてて深い意味があってこれを選んだわけではありません。現代の日本人が読んでも愉快な内容であること、教訓を強いるような説教臭さがなくて痛快であること、出てくる人物がみんなちっとも立派ではなくて、私やアナタと同じように、ダメな連中ばかりであること(失礼!)。そんな理由で選びました。現代の日本社会において、私が特に問題だと思っているのは世代間格差の存在で、そのようなテーマがいくらか透けて見えるということもありますが、まあ、理屈抜きに楽しめるお芝居を目指しましたので、難しいことは考えず、儚くも可笑しい人生を描く喜劇を、味わっていただければ幸いです。

 公募に応えて集まって下さった出演者の皆さんは、世代はまちまち、職業もバラバラ。普通に働いて、普通に生活している方々です。いわゆるプロの俳優はひとりもおりません。老若男女が集い、知恵を出しあい互いに支えあう稽古場は、まるでひとつのコミュニティのようでしたし、文化芸術活動が媒介となってコミュニティが形成されるというのは、この月見の里学遊館の最も正しい使い方ではないかと感じました。そして、そんな出演者の皆さんが、日常生活を営みながら限界ギリギリまで時間を割いて努力した成果を、今日はご堪能下さい。また、音楽の渡会美帆さん、衣裳の倉田布美江さんをはじめとする、スタッフの皆さんのお仕事にもご注目下さい。

 そもそも演劇とは、古代ギリシアの市民階級が担った、神を祀る儀式にその起源を持ちます。やがてギリシア市民は、ただ演劇を神に捧げるだけでは飽き足らず、同胞へと問題提起する手段として、演劇を活用するようになったようです。従って、演劇とは本来、市民が市民に何事かを訴えかけるための手段です。そう考えると、私自身はプロの演出家ではありますが、実のところ、プロの演劇人の存在意義について懐疑的にならざるをえません。今回のように、市民が出演し市民が鑑賞する演劇こそが、演劇の原点なのではないでしょうか。そして私もまた、ひとりの演劇人ではなくひとりの市民として、袋井に生まれたこの期間限定のコミュニティに参加することができたことを、喜ばしく思っています。

 

俳優さんたちの演技、渡会さんの音楽、倉田さんの衣裳、ちよこさんのヘアメイク、石橋さんのフェイスメイクと、様々な要素がきれいに一体化した本番でしたな。さらに、劇場の管理を委託しているJTSのスタッフさんたちが頑張ってくれて、照明プランも演出コンセプトをしっかり汲んでいただいたものになっており、素敵でした。本当に助かりました。

月見の里学遊館の事業モデルと言うべき内容に仕上がりましたので、これから、色々な意味で仕事がしやすくなるんじゃないかと思います。「敷居が高い」という批判に対しては、今回を成功例として反論できますからね。

それにしても、やっぱり、主演男優が凄かった。袋井の中年スター誕生ですな。

 

倉田さんところには↓素敵な集合写真や衣裳写真が出ております。

http://kuraft.hamazo.tv/e1837537.html