黒テント(http://www.ne.jp/asahi/kurotent/tokyo/)のお芝居『三文オペラ』を観に、池上本門寺へ。まずは、都内にこんな立派なお寺があるということを初めて知って、驚いた。

ブレヒトの代表作を、日露戦争後の明治日本を舞台として翻案した傑作である。斎藤晴彦さん演ずる主人公メッキー・メッサー=剃刀の左平次がとにかくかっこよかった。また、狂言回しで登場する服部良次さんも、芸達者ぶりを発揮していて面白かった。全体に、これは山元清多さんの戯曲に魅力があるんだなあと感じた。初演をビデオで観たときには、ああ信さんの芝居だ、と思ったのだが、生で観ると、いややはりこれは元さんの芝居だよな、と。

お寺の境内なのに神主のような格好をした帝の使いが現れ、左平次に恩赦を言い渡す終幕など無類のおかしさではあるのだが、ただ、先日コント集団ザ・ニュースペーパー(http://www.dop.co.jp/ )の公演を観て、彼らの十八番芸である「さる高貴な御一家による会見の儀」に爆笑してしまったため、この黒テントのようなほのめかしは、どうも破壊力を欠くという印象がつきまとった。笑いという仕掛けでお客を惹きつける限りは、ザ・ニュースペーパーの方がわかりやすく、かつ、笑った後でぞっとさせる迫力を備えていたと思う。翻って、芸術というのは難しいものである。