はままつ演劇人形劇フェスティバル2012「浜松ゲキトツ」

演劇・人形劇合同公演『邯鄲(かんたん)』

ここ7年ほど、浜松市文化振興財団が主催し、浜松界隈のアマチュア劇団および人形劇団が結集する「はままつ演劇人形劇フェスティバル」というイベントを、コーディネーターという立場でお手伝いしてきました。演劇と人形劇が同居するフェスティバルは全国でも珍しいと思うのですが、これを決して行政主導ではなく、地方の自立劇団が協力し合って、行政がこれをサポートする形で長年続けてきた点でも、日本全国に誇りうる演劇フェスティバルだと思います。大いに共感した私は、企画委員に就任して様々な提言をおこない、演劇賞や劇評賞の審査、ワークショップ講師、オープニングイベントの司会進行など、フェスティバルの底上げにつながる様々な仕事を、これまで務めてきました。

それで、以前このフェスティバルで演劇と人形劇の合同ワークショップをおこなったことがきっかけとなって、せっかく「演劇人形劇フェスティバル」なのだから、もっと積極的に合同の企画をやろうという声が上がりました。これを実現させるべく、ついに今回、演劇と人形劇が合体したお芝居を創ることが決まり、演出は、不肖大岡が務めることになりました。演目は、三島由紀夫『近代能楽集』の一篇『邯鄲』を選びました。これは三島が、能の演目『邯鄲』を、自由かつ大胆に、現代版にアレンジした作品です。

下敷きとなっているのは、中国の故事「邯鄲の枕」。これは、盧生という若者が故郷を離れ趙の都の邯鄲に至り、そこで出会った道士に不平を打ち明け、道士から授けられた枕を用いたところ、一夜の夢の中で栄耀栄華を極めた果てに目が覚めて、己の欲を取り払ってもらったことを道士に感謝する、というお話です。ところが、三島由紀夫の『邯鄲』の主人公・次郎は、自分の人生は18歳にして既に終わってしまったのだから、枕の効き目はないと断言して、不思議な枕を試します。果たして、次郎はどんな夢を見るのでしょう?

夢の中で一生を過ごす。そんな、現実と非現実が入り混じる物語だからこそ、俳優と人形とのコラボにはふさわしいのではないかと考えました。また、小泉改革からTPPに至るまで、アメリカ型の競争社会へ日本を改造してゆくことに人々が賛同している現代において、占領軍によって設計された戦後体制に背を向ける、三島由紀夫の描く人物像を、今こそ召喚してみたいとも考えた次第です。

キャスト・スタッフは、このフェスティバルにエントリーしている、劇団および人形劇団のメンバーの皆さん。演奏で、マリンバ奏者の永吉まゆみさん、俳優で、SPACの奥野晃士さんもゲスト出演します。小規模ながらも豪華な企画です。同日の夜に、ファイナル・イベントも開催されます。ぜひ観に来て下さい!

●作/三島由紀夫(『近代能楽集』より)

●演出/大岡淳(SPAC-静岡県舞台芸術センター)

●音楽/永吉まゆみ(マリンバ・パーカッション奏者)

●美術/布施佑一郎(劇団からっかぜ)

●出演/市内演劇団体・人形劇団体所属の有志

●特別出演/奥野晃士(SPAC-静岡県舞台芸術センター)

●日時/平成25年1月20日(日)14:00

●会場/アイミティ浜松ホール

●料金/一般1000円・大学生以下500円

●チケット取り扱い/アクトシティチケットセンター、HCF オンラインショップ(http://www.hcf.or.jp/)、全国チケットぴあ取扱店(Pコード423-259)

●公開リハーサルあり/1月19日(土)15:00 料金500円(当日支払のみ)

●お問い合わせ/公益財団法人浜松市文化振興財団
tel. 053-451-1151 fax. 053-451-1123
E-mail:culture@hcf.or.jp
ウェブサイト:http://www.hcf.or.jp/bunka/engeki/