昨年、ジョングルール・ボン・ミュジシャンという古楽アンサンブルのコンサート『時をかけるジョングルール』を演出しまして、『音楽の友』誌で、音楽評論家の谷戸基岩氏から年間コンサートのベストワンに選出していただくなど、高い評価をいただきました。このたび、再び大岡演出で、ジョングルールのコンサートをお楽しみいただきたいと思います!

ジョングルールとは、西洋中世の放浪芸人です。彼らは、宮廷歌人(トゥルバドゥール)が作った歌をはじめとして、様々な音楽を奏でていました。碩学・林達夫は、久野収との対談本『思想のドラマトゥルギー』の中で、アナトール・フランスの短編小説「聖母の軽業師」を取り上げていますが、この「軽業師」がすなわちジョングルールです。賤視されていた放浪芸人が、聖なる存在へと転化するダイナミズムに、林達夫は早くから注目していました。

そして、西洋史上初めて男女間の「愛」を主題として歌ったのが、トゥルバドゥール/ジョングルールであったという説があります。さらにそれは、西洋が対外的な拡張を始め、先進イスラム文明と接触した、12世紀ルネサンスの賜物だったという説も。つまり、「愛」を謳うイスラムの歌謡が西洋に影響したということですが、これを強固に否定し、西洋のオリジナリティを主張する説もあります。

いずれにせよ、信仰も恋愛もごっちゃまぜで、〈聖〉と〈俗〉、〈ハレ〉と〈ケ〉を往還する中世の世界観が、歌と演奏を通して鮮やかに甦る点に、ジョングルール・ボン・ミュジシャンの魅力があります。

前回は、歌手の辻康介氏を「フーテンの寅」のようなヤクザな放浪芸人に見立て、彼の一代記を歌で綴るという筋立てを設定してみました。今回の『時をかけるジョングルールⅡ』はまた趣をかえて「ジョングルール劇場」というコンセプトを設定しました。まるで寄席や演芸場のように、様々な演目が飛び出します。中心になるのは、スペインのカンティガ集。聖母マリアを賛美する歌曲集ですが、中には、突拍子もないエピソードがいくつも含まれています。芝居仕立てのコンサートを、存分にお楽しみ下さい。

また今回は、静岡公演と東京公演がございます。静岡会場は顕光院というお寺、東京会場は戦後歌謡の殿堂、古賀政男記念博物館けやきホールです。お近くの会場でお楽しみ下さい。

SPAC「午後のアートカフェ」
SPACの新企画「午後のアートカフェ」の第3日「ワールド・ミュージック・カフェ」の中で、コンサート前日の11月9日に、ジョングルール・ボン・ミュジシャンによるプレレクチャーをおこないます。11月10日のコンサート本編と合わせてお楽しみ下さい。
●日時/11月9日 カフェ営業13:00~17:00(ジョングルールによるレクチャー「ようこそ、西洋中世の音楽世界へ!」は15:30~16:30)
●会場/静岡芸術劇場1Fロビー
●チケット/1,000円(ワンドリンク付/入退場自由)
●予約/SPACチケットセンター TEL.054-202-3399(受付時間:10:00〜18:00)

時をかけるジョングルール
コンサート本編です。静岡版です。
●日時/2013年11月10日(日)開場18:30 開演19:00
●会場/曹洞宗 医王山 顕光院 〒420-0029静岡市葵区研屋町45番地
●チケット/前売 一般¥3,000 当日¥3,500 大学生以下¥2,000
●予約/トラディショナル・サウンド 堀池 090-3458-4497
biyabonkozou777g@gmail.com

時をかけるジョングルールⅡ
コンサート本編です。東京版です。
●日時/2013年11月15日(金)開場18:30 開演19:00(18:40よりプレトークあり)
●会場/けやきホール(古賀政男音楽博物館1階)東京都渋谷区上原3丁目6-12
(小田急線・千代田線「代々木上原」駅下車・南口1より徒歩3分)
●チケット/前売¥3,500円  ペアチケット¥6,000円 当日¥4,000円
●予約/鷲野宏デザイン事務所 phone 050-3736-1404 ※タイトルをクリックして下さい。サイトからチケットお申し込みが可能です。