Shizuoka春の芸術祭2004で来日した、アレクサンドリンスキイ劇場『検察官』を観に、静岡芸術劇場へ。原作は言わずと知れたニコライ・ゴーゴリ、演出はメイエルホリド・シアターセンターのヴァレリイ・フォーキン。
ロシア・アヴァンギャルド風のセノグラフィ、客席から参加するコーラス、戯画的なアクションを多用する演技が総合され、なかなか見応えのある舞台だった。愉快で見応えはあるのだが、しかし終わってみると、見応えがあるだけかなという気もした。この戯曲のテーマは「俗物根性とは制度腐敗の裏面である」ということだと思うのだが、残念ながらこの刺激的なテーマが特定の時代状況や社会状況と結びつけられることはなく、かといって徹底した普遍性が目指されるわけでもなく、演出は戯曲のコミカルな面を引き出すことに終始していたという印象である。
もっとも、メイエルホリドの舞台がどういうものだったかを推測する手がかりにはなったような気がする。最近の私は、メイエルホリドの演出手法というのは要するに野田秀樹みたいなものだったんじゃないかと考えており、この『検察官』も、言ってみればそんな感じの舞台だった。やはり、スタニスラフスキーとメイエルホリドというのは相補的な存在として捉えるべきではないだろうか。