松本龍復興担当大臣の「恫喝」が話題になっていますね。

http://www.youtube.com/watch?v=TpvGCRA4228

いや確かに品のないお人柄ですが、そんなのは、九州ヤクザの「個性」ですから、大目に見てやってもらえませんか(笑)。被災地の人々に対する侮辱だと怒っている人もいますが、被災地のことを考えるならば、本当の問題は、松本復興相の「口調」などという些末な話ではなく(そんなこと言ったら『朝まで生テレビ』に出演していた鈴木宗男先生の方がよっぽど凄かった)、宮城県知事が今何をやろうとしているかでしょう。

で、こういうことが起きている。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-06-22/2011062201_07_1.html

この水産特区構想というのは、簡単に言っちゃえば、個人商店が軒を連ねる商店街が被災して、そこに「復興支援」を名目としてイオンが出店するのを許可して、個人商店の諸君も、もう青息吐息なんだから、だったらイオンのテナントに入っちゃいなさい、というような話ではないですか。TPP推進と軌を一にした動きですね。民間企業が参入して、そこで果たして、漁師さんたちの雇用や所得が守られるのかどうか。90年代以来「規制緩和」の大合唱で、小泉改革を実施し、現実に何が生じたか。地方社会が衰退し、経済格差が拡大し、少子高齢化は解決不能に陥ったというのが、その答えではないですか。そういうことを考えれば、漁協が水産特区構想に警戒するのは当然のことだと思えます。

youtubeの動画を見ると、松本大臣は「水産特区は県でコンセンサスを得ろよ。じゃないと何もしないぞ」と言っている。これはつまり「村井知事が、漁協の首を縦に振らせない限り、政府が後押しすることはできない」という意味でしょう。

松本龍個人の出自を見る限り、おそらく、漁協の側にシンパシーを持っているんじゃないかと想像されますが、菅内閣は、明確にTPP推進を打ち出している。しかし一方、原発を巡って「七奉行」に亀裂が生じつつあるようにも見える。そのような微妙なポジションに身を置く閣僚から「コンセンサスを得ろ」「しっかりやれ」発言が出たということは、特区構想はいいけれども、県の側から漁協の側に歩み寄れ、彼らが納得するような条件提示をして説得しろ、という話じゃないですか。しかし松下政経塾出身のネオリベ村井知事としては、強行突破したいんじゃないか。ポスト菅を見越した政局の中で、鳴りをひそめている前原あたりと、そのような絵を描いているのかもしれない。まあぜんぶ想像で言うだけですけどね。

東北放送がこの映像を流したのは、もちろん村井知事サイドと合意の上でのことでしょう。水産特区構想に関して村井知事と松本大臣の意向が微妙に食い違った結果、村井知事サイドが仕掛けたトラップではないか。もちろん「恫喝されたから仕返ししてやるー!」なんて低レベルな戦いであるわけがない。子供じゃないんだから。私は陰謀論が好きなので、数分遅れで入室したということからして、意図的だったんじゃないかとすら考えてしまいます。少なくとも「菅内閣は、県知事の復興推進を邪魔している!」「県知事、国に負けずに頑張れ!」という印象操作は、結果的にできちゃったでしょう。それによって最も利益を得るのは誰だろう?

まあ解釈はいろいろでしょうが、ともあれ、「どのように語ったか」より以上に「何を語ったか」に注目しましょう、というお話でした。