ワークショップ「大岡システムを構想する」


 

「大岡システムを構想する」と題した、非公開の演技ワークショップを2日がかりでやっておりまして、第1日が終了いたしました。今回は誰に頼まれたわけでもなく、私個人が演出の技能をブラッシュアップするために企画した、私個人のための企画です。しかし、8人の若き精鋭が集まってくれたので、おかげさまで楽しくやらせてもらっています。

で、今日のメニューを公開してみます。

(1)20世紀演技術の二大潮流(「内→外」型と「外→内」型)についての講義

(2)立つ・歩く・座る

(3)歩行の創造(△歩き、□歩き、○歩き、・点歩き)

(4)ポーズからポーズへのムーブメント(カウント16→8→4→2)

(5)表情の創造

(6)ポージング&ムーブメントA(フリーズ→リラックス→フロー→リリース)

(7)ポージング&ムーブメントB(ロウ→ミドル→ハイ、シリアス/コミカル)

(8)ポージングによる即興ドラマ

(9)ポージング&ムーブメント&演奏によるモリエール『ゴリ押し結婚』のエチュード

と、項目だけ書いたところで同業者以外の方は想像すらつかないでしょうが、いずれもフィジカルなエクササイズです。一時期私の演出は「身体性が弱い」なんていう批判を受けていましたけれども(つーかその頃は身体訓練そのものに懐疑的で、即興ばかりやっていたから、そりゃそうだろうとしか言いようがなかったですが)、ここ数年、すっかりフィジカルな方法論にシフトしてきました。

なぜそうなったかと言うと、私はブレヒトの演劇論をお手本にしていて、ブレヒトが京劇に注目していたことにヒントを得た、というか、そのブレヒトの着想をそのまま借りてきただけなんですが。観客の舞台に対する感情同化を妨げるような、作り物感が露呈している演技の具体化として、ステレオタイプを利用した〈型〉が必要だろうと。その〈型〉を、古典的な様式に従ってではなく、現代の俳優が自発的に創造するための方法を、構想してみた次第です。

あともうひとつ、そもそもフィジカルな方法論やコミカルな要素は、小劇場演劇のお粗末な身体表現やお粗末なギャグが幅をきかせていたときはあえて控えていたのですが、そんなものも下火になってきたので、そろそろ解禁にしようという判断も働いています。

2日目は、いよいよジャン・コクトーのテキスト『声』を使ったエチュードです。はてさてどうなりますことやら。

ところで、こうやって東京の現場で20代の諸君と出会って、あれこれお喋りしてみると、格差社会の厳しさがひしひしと伝わってきます。私が20代の頃はまだバブルの雰囲気が残っていたので、「女の子は派遣社員ができるから縛りがなくていいなあ」なんて、ずいぶん暢気なことを言っていたのですよ。アルバイトの口にも困りませんでしたし。なにより、まだ誰もが右肩上がりの幻想にまどろんでいましたね。

それと比べると、今の20代の若者は、右肩上がりの希望を抱けないし、経営者は若者が文句を言わないのをいいことに劣悪な労働環境を強いているし、それでいて「やりたいことを見つけろ」などという無責任なスローガンが飛び交っているし、ホント踏んだり蹴ったりですね。

私としては、せめて才能のある若者が、過大な妥協をすることなく、過大なストレスを背負うこともなく、才能を伸ばしながら生活できる現場を作ってやりたいと考えていますけれどもね。しかし私自身は、悠長に行動することが許されている年齢でもないので、できれば早めに結果を出していきたいと考えております。