敵国の側に立って戦った裏切者なのだから、死骸は野ざらしにせよと、国王である叔父が命ずる。いかに裏切者といえど、血の繋がった家族をこのままにはできないと、女は兄を埋葬する。かくして、禁令に背き、国家の反逆者として幽閉された女は、自害して果てる。これが、ソフォクレスのギリシア悲劇に描かれたアンティゴネーである。

現代詩人・守中高明の長篇詩『シスター・アンティゴネーの暦のない墓』は、このアンティゴネーのイメージを、国家が自己正当化のために捏造する 〈歴史=物語〉から零れ落ちる、虐げられた名もなき存在—雪、灰、あるいは砂のような—へと押し広げる。すなわち、アンティゴネーとは、あなたであり、私なのだ。

この演劇的詩篇を、ふたりの女優によって、文字通り演劇化してみよう。ただし彼女らには、特権的な名を持つ登場人物たちを演ずるのとは全く異なり、名もなき存在として、舞台の上にただ佇んでもらいたいと思っている—〈歴史=物語〉に抗するために。

テクスト:守中高明
構成・演出:大岡淳
出演:絢、蔭山ひさ枝

日時:3月11日(金)20:00
3月12日(土)15:00
3月13日(日)15:00

チケット:前売 2,000円 / 当日 2,500円
取扱:CoRich 予約フォーム
tel:054-269-5898(七間町このみる劇場)
劇場酒場Pinspot
パソコン facebook:あやとひさ枝のふらり旅

トークゲスト:
終演後に、ゲストを招いてのトークセッションを予定しています。
11日(金) ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(アーティスト)
12日(土) 大澤真幸(社会学者)
13日(日) 上杉清文(富士市本國寺住職/劇作家/福神研究所所長)・佐々木治己(劇作家)

プロフィール:
■守中高明 (もりなか・たかあき)
詩人。1960年東京都生まれ。学習院大学大学院博士課程修了(フランス文学専攻)。早稲田大学法学学術院教授。
詩集に『砂の日』(1991)、『未生譚』(1992)、『二人、あるいは国境の歌』(1995)、『守中高明詩集』(1999)、『シスター・アンティゴネ―の暦のない墓』(2001)、『系族』(2009/以上思潮社)、単著に『脱構築』(1999)、『法』(2004/以上岩波書店)、『終わりなきパッション―デリダ、ブランショ、ドゥルーズ』(2012/未来社)等がある。共著、訳書も数多く手がけている。

■大岡淳 (おおおか・じゅん)
演出家・劇作家・批評家。1970年兵庫県生まれ。SPAC-静岡県舞台芸術センター所属、静岡文化芸術大学非常勤講師、河合塾COSMO東京校 非常勤講師。
主要演出作品に、ジョルジュ・バタイユ『マダム・エドワルダ~君と俺との唯物論~』(2013/江戸糸あやつり人形座)、上杉清文・内山豊三郎『此処か彼方処か、はたまた何処か?』(2014/SPAC)、大岡淳『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』(2015/SPAC)等、編著に、『21世紀のマダム・エドワルダ』(2015/光文社)がある。