ほりえもんとの架空問答。


ライブドアの堀江社長によるニッポン放送株取得には、ロスチャイルドと野村證券の提携も絡んで、色々と複雑な裏がありそうだ。メディアに露出している堀江社長はスタンドプレーをやっているように見えるけれども、画を描いた黒幕は別にいたりするのだろう。しかし、小泉や竹中が言うような、構造改革によって活性化される「民間」というのは、まさにああいう利ザヤ稼ぎを専らとする法人が、堂々と暴れ回ることのできるマーケットを指しているのではないのか? あれほど巷間の話題について無駄口を叩くのを好む小泉首相が、堀江社長の一件についてはコメントを避けているのは、なんとも意味深である。民主党の岡田代表は、時間外の株取得を「合法」と評したそうである。こうした、政界の若年世代に共通する堀江社長を擁護するようなムードが、これからの日本を覆うグローバリゼーションの荒波を予感させてくれる。

それにしても、堀江貴文という御仁はこれまでに見ないタイプの人物(もっとも、「一昔前なら総会屋をやっていたようなITヤクザ」と言ってしまえばそれまでである。ただ、総会屋はメディアに露出したりしなかったからね)なので、からかってみたくはなる。今朝のテレビ番組では、「外資が日本のマスコミを買収したとして、どんな不利益があるというのか」とキャスターに反論していた。

そこで、カネやらコネやらの分析は専門家にまかせ、私としては、彼が建前として主張することを建前の通りに受け取って、人物評を試みたい。彼には子供はいないのだろうが、仮に息子がいたと仮定して、親子の会話を想像してみた。

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息子: お父さん、イラク戦争についてどう思う?

堀江: どうもこうもないよ。関係ないだろ、日本には。

息子: えっ、でも、自衛隊の人たちもイラクに行っているよ。関係なくないじゃん。

堀江: だからあれは、得になるから行っているだけだよ。得するなら行けばいいし、得することがないなら行かなければいい。その程度のことだよ。どっちみち、関係ないよ、お父さんたちには。

息子: でも、自衛隊の人たちがイラクに行っているおかげで、お父さんの会社も得してるんじゃないの?

堀江: 戦争で得したり損したりするのは日本政府で、そんなの、お父さんの商売には関係ないんだよ。

息子: ふうん……。でも、お父さんのテレビ局で、さっき「北朝鮮と戦争しろ」とか言ってたよ。

堀江: それは、みんなが戦争したいと思っているから、その通りキャスターに言わせただけだよ。みんなが望む通りのものを見せるのが、マスコミの仕事だからね。

息子: お父さんの考えとは関係がないの?

堀江: そうそう。

息子: お父さん社長なのに?

堀江: そうそう。

息子: じゃあ、みんなが戦争反対って言えば、お父さんのテレビ局でも「戦争反対」って言うの?

堀江: そうそう。それが商売だから。

息子: ふうん……。でも、みんなが反対したんじゃなくて、賛成したから、自衛隊の人たちがイラクに行っているんでしょ?

堀江: そうだよ。

息子: じゃあさあ、自衛隊の人たちがイラクで、誰かを殺したり、誰かに殺されたりしたら、それはもともとは、日本のみんなが戦争に賛成したせいだってことになるよね?

堀江: ……まあな。 

息子: んで、みんなが賛成したってことは、とうぜんお父さんのテレビ局でも「イラク戦争に賛成しよう」って、キャスターに言わせたってことになるよね? そしたら、そのテレビを見て「そうか、賛成しなきゃいけないんだ」と初めて気がついて、賛成した人だっているかもしれないよね?

堀江: おまえ、なんでそんなややこしいこと考えるんだ?! 学校の先生に洗脳されたのか?! 

息子: 別にややこしくないよ! だからさあ、もしイラクで自衛隊の人たちが撃ち合いをして、誰かが死んじゃったら、それってやっぱり、何パーセントかはお父さんのせいってことにならない?

堀江: あのね、お父さんは株主でね、経営の問題はまた別って言うか……

息子: そんなのインチキだよ! このあいだお酒飲んだとき、「フジサンケイは俺のもの」って言ってたじゃない!!

堀江: いや、「ユダヤのおじさんたちのもの」って言わなかったか?

息子: えーっ?!

堀江: わかったわかった、じゃあお父さんのせいだってことにしとくよ。はいはい、お父さんが殺しました。

息子: 真面目に答えてよ!

堀江: 真面目に答えてるじゃないか! ……まあ、そうだな、イラク戦争と、お父さんの会社と、関係ないってわけじゃないな。戦争のおかげで、どちらかといえば、得したんだろうな。得したからには、反対じゃなくて賛成だな、イラク戦争には。

息子: それって、お金のためなら人殺しもするってこと? 自分が生き残るためなら、他人が犠牲になるのは構わないってこと?? お父さん、本当は殺し屋???

堀江: あのな、そういうことはな、オトナになったらわかるから。

息子: え~~~~。じゃあ、一つ質問。家にテロリストがおしかけてきて、お父さんと僕がつかまりました。テロリストは「ひとりだけ殺すから、どちらにするか、自分たちで決めろ」と命令しました。そのとき、お父さんはどうしますか?

堀江: いや、だからそれは、えー……

息子: や、やっぱり迷うんだ!!

堀江: いやだから、仮定の話には答えられないって言ってるじゃないですか!

息子: だ、だ、だれに喋ってるの?!(泣き出す)

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この息子は、この後グレるか、ひきこもるかであろう。ツルゲーネフは「父と子」で、バザーロフというニヒリストを創造した。「父」の権威を嘲笑する「子」であるバザーロフは、結局は自殺してしまう。ニヒリストの問題とは、いつまで経っても「子」のままで「父」にはなれない点にある。むろん、それでこそニヒリストではあるわけだが。