「コンベヤーは止まらない」の稽古が、ほとんど休みなく、延々と続いている。AプロとBプロにわかれているので、実際問題、2時間の芝居を2本作っているようなものだ。先日はAプロ、今日はBプロの通し稽古をやることができた。だいたいの目鼻はついたという感じである。これから本番までは、肉付けをしていかねばならない。30名近くを動かさねばならないので、結構大変な現場である。

「コンベヤー」という戯曲は、私の解釈では、自立演劇に見られるようなプロレタリア演劇の図式性を克服し、象徴主義的・表現主義的な手法を駆使しつつ、しかしなお資本制を批判することを意図している。1962年の作品であるから、まだアングラは市民権を得てはいなかった頃だろう。新劇とアングラとの分断を克服する「ありえたかもしれぬ戦後演劇」を夢想する私としては、新劇的な演出手法を意図的に脱却してこの芝居を作りたいと考えているのだが、どこまでうまくできているか自信がない。いまどきこのくらいのことは文学座のアトリエ公演でもやっているんじゃないか、という不安がつきまとう。自分自身としては、日本の古典戯曲を演出するスタイルを獲得しつつあるつもりなのだが、常連さんからすれば「またいつもの遣り口だ」と見えてしまうのかもしれない。うーむ。

ともあれ、この試演会の演出は全く予定になかった不意打ちのような企画なので、なんともスリリングではある。