「サイレント・クレヴァーズ」を読む。


原田武夫「サイレント・クレヴァーズ 30代が日本を変える」(中公新書ラクレ)読了。

著者は、1971年生まれの外務官僚。1970年前後に生まれ、組織ではプレ・ミドルに位置し、変革の気概を持ちつつも、今は坐して好機を待つ「サイレント・クレヴァーズ」が、無責任世代(団塊世代のことだ)のトップに退場を迫り、日本社会を変える救世主たりうると論じられている。しかし焦りは禁物であって、今は、情報を交換し議論を重ね人脈を広げるべく「同世代異業種人材インキュベーター会合」(http://www.70nen.com/)に参集すべし、と説かれている。

マニフェストとしての性格が強く、さして中身の濃い本ではない。70年前後生まれ世代がこれから頭角を現す客観的な条件がいくつも挙げられているが、これらが本当に客観的な指標と言えるのかどうか、なんとも心許ない。ただ、この世代の特徴として、グローバリゼーションに適応する能力を持ちつつも、一方で「日本」にこだわりを持っていると指摘されているのは面白かった。「日本」にこだわるのはもはや合理的な行動とは言えず、おそらく、戦後日本の繁栄へのノスタルジア(例えば「プロジェクトX」のような成功譚)を先行世代と共有している結果だろう、と説明されている。これはたぶん当たっている。私は1970年生まれなのでどんぴしゃりの年齢だが、自分を顧みてもその通りという感じがする(もっとも私は、国外で活躍できる能力など持っていないのだが……とほほ)。

ところで、70年前後生まれ世代は未だ、傑出したタレントとして頭角を現してはいない。ミュージシャンの小沢健二や曽我部恵一、脚本家の宮藤官九郎、思想家の東浩紀、小説家の阿部和重など(のきなみキーワードでリンクされるのはなんかむかつくぞ!)、既にブレイクした諸君を並べてみても、この人たちは80年代サブカルチャーの遺産で食わせてもらっているという印象が強く、世代的なオリジナリティはさして感じられない。著者の論法でいけば、この世代が真に救世主たりうるのはプレ・ミドルからミドルへと出世を果たしてからで、つまりまだあと5年から10年ほどの潜伏期間が必要なのである。

どうも楽観的に過ぎるという気がしないでもないが、マニフェストだからこのくらいで丁度いいのかもしれない。ともかく、私自身の世代について真正面から論じられたおそらく初めての本なので、楽しんで読めた。