桐朋学園短大、1限「身体表現法」は、蜷川幸雄御大の稽古にいつもの教室を貸してしまったため、急遽教室を変え座学に切り替え「音楽と身体」をテーマに講義。しかし一部女子学生の私語がけたたましく、叱り飛ばそうかと思ったが「ここは演劇専攻じゃなくて音楽専攻なんだよな」と思うと気後れして、結局放置してしまった。演奏家というのは誰でもそれなりの主体性を備えているもので、年長の学生にはその萌芽が感じられるのだが、問題の女子学生たちにはそれがない。おそらく彼女らは、幼い頃に楽器をあてがわれ、さして反発を覚えることもなくなんとなく成長し、なんとなく入学してきたのであろう。以前なら専門学校にしか入学できない人材だが、少子化の時代ゆえに音大にまで入ってこれちゃうのである。やはり、説教しておかねばならんかなあ。

2限「日本演劇史(現代)」は、徹夜で準備したにも関わらず、否、またしても徹夜しちゃったために、フラフラであった。話はいよいよ60年代後半のアングラ演劇に突入しているのだが、この時代はどこをどう切っても面白いので、却って体系立てて説明するのが難しいということに気がついた。ベトナム反戦運動、パリ五月革命、全共闘運動と解説して、唐十郎が新宿西口公園でテント公演を強行して逮捕された話だとか、蜷川幸雄&清水邦夫コンビの「真情あふるる軽薄さ」で毎晩観客が偽者の機動隊員に殴りかかった話とか、講談調で面白おかしく語ってみせた……と書くとまるでうまくいったかのようだが、きっと単に散漫だったのだ。ああああああ。

午後、尚美学園大学「文章表現法」は、またしてもケアレス・ミスをやってしまったのだが、開き直ってパワフルに臨んだところ、今日はタチの悪い学生諸君がついてきてくれたので、珍しく気分よく終えることができた。タチが悪いといっても集中力が欠けているというだけで、ここの学生の多くは、人間的には素直なイイ奴ではあるのだ。桐朋の学生の方がモチベーションが高い分、講義の手応えははるかに上回るが、それだけに今日の1限のように歯車が噛み合わないと、疲労の度合いも大きいという具合である。