自民党を観察する。


小泉改革=郵政民営化が象徴するのは、自民党が、公共事業を通した利益分配によって景気と雇用を維持する、田中角栄以来続いてきた「経世会」系統の利権屋政治から脱皮し、多国籍企業を主体としたグローバリゼーションに適応する都市型政党へ脱皮するという一事である。自民党がこれからの日本経済のモデルと仰いでいるのはもちろんアメリカで、製造業中心から情報・金融業中心へとシフトする「ポスト産業主義」段階へ、日本も乗り遅れてはならないという危機意識が、「切るべきは潔く切る」という宮廷革命を引き起こす原動力となっている。これが、日本のアメリカへの一層の属国化を促進するというのは確かにその通りなのだが、ただし、アメリカに本社を置くユダヤ系金融資本は、決して非合法にジャパン・マネーを吸い上げていくわけではない。日本の銀行と競争すれば、事業計画を査定して的確な投資をおこなう能力においても、あるいは多様な金融商品を預金者に提供するサービスにおいても、ユダヤ系金融資本の方がはるかに勝っている。従って、橋本内閣における「金融ビッグバン」の総仕上げとして小泉内閣の郵政民営化が実現し、郵貯・簡保の資金350兆円がマーケットに流出する暁には、結果として、情報収集力・金融技術力・商品開発力の差から、川上から川下へ水が流れる如く、自然とカネが外資の手元に集まる、という理解が正しい(預金者・投資家にとっては、日本の金融機関にカネを預けるより外資に預ける方が、高利回りだったり高配当だったりする。そしてそのぶん、ハイリスクでもあるということだ)。その合法的性格ゆえに、単純にアメリカを「帝国」と罵ることは難しい。アメリカに現実的に対抗するためには、日本国内の金融資本が「護送船団方式」から脱皮して一層の近代化を遂げ、国際的競争力を獲得するしかなく、これに呼応して、自民党も体質を一新せざるをえないというわけである。労働運動の側から身も蓋もない言い方をすれば、中曽根が国労を切ったのに続いて、小泉は官公労を切って捨てるということでもある。

今さら言うことでもないが、従って、旧来の自民党の「癒着政治」や「談合体質」、「政治とカネ」、さらには「経営危機の銀行への血税投入」を告発していた批判勢力は、小泉改革を批判する資格をもたない。また逆に、そうした声を「現実無視の理想主義」と批判してきた保守勢力は、今こそ国民新党やら新党日本やら新党大地やらを応援することで、筋を通すべきなのだ。なぜかそれが逆転して見えるところに、日本の政治的言論の醜悪さがある。コロコロと立場を変えるのは結構だが、そういう無節操な輩は他人に説教をしてはいけない。深く恥じ入りつつ、黙って投票せよ。

かくして自民党は、情報・金融業を中心として企業経営者層およびサラリーマン層に支持母体をシフトさせるつもりであろう。事業を展開する潜在能力を持ちながら資金不足にあえぐ新興企業も、「ほりえもんに続け」とばかりに、当然ながら自民党を支持する。同じく都市型政党を標榜しながら、この流れに完全に乗り遅れたという点で、もはや民主党は惨敗である。そして、こうした経済状況の変化により切り捨てられるのは、建設業や製造業で働く最下層の労働者であろう。それを「能力のない人間が稼げないのは仕方がない」と無視するのが自由競争の原理であるらしい。私は、現在は頭脳労働者としてなんとか仕事にありついている身であるから、公正なる自由競争が実現すればするほど自分に有利に働くという気もするのだが、ひとたび怪我をしたり病気にかかったりしてハンディを負う可能性を想像すると、慄然とさせられる。諸君、もう冒険はできない。貯蓄が乏しいならスポーツは止めておけ。信号は守れ。予防注射は打て。できる限り車には乗るな。職場と自宅の往復にのみ明け暮れよ(満員電車で)。ひとたび不運な目に遭ったら最後、この社会は非情な暗黒へと姿を変えるのだから。例外は億万長者のみ。ついでに、残業は過労死しない程度にね。

ところで、最近気になるのは公明党で、テレビで観る印象だけで言えば、今や神崎代表ほど、野党を声高に批判し強気に出ている政治家は他にいないように感じられる。公明党は自営業者や中小企業経営者を支持母体としており、「小さな政府」というのは利益にならないんじゃないかとも思うのだが、なおもその集票能力ゆえにキャスティング・ボートを握っている旨みが、かの党の政治家たちにシニカルで卑屈な自信を与え、神崎の顔をますます悪人にさせているのかもしれない。あるいは事態はもっと深刻で、自営業者や中小企業経営者も、もはや「官」からのおこぼれには期待しておらず、いちはやく勝ち組の大手企業から下請けの仕事を獲得するために、やはり小泉自民党の政治力を借りなければならない、そのためになりふり構っていられない、ということなのか。

最後に共産党の諸君。鈴木宗男と組むくらいの度量を見せることができれば、日本で革命を起こせるかもしれないぞ。しかし、君らには逆立ちしたって無理だろうね……。