芝居漬けの日々。


昨日今日とSPACで、静岡文化芸術大学の集中講義の枠内で大学生対象の演劇ワークショップをおこない、たまたま同日だったのですが、その後で高校演劇フェスティバルの演出指導をおこないました。ワークショップは、ここのところ最後にやってもらう発表が今ひとつうまくいかず私自身の課題だったのですが、今回はワークショップ全体を「形・動き・声・言葉・演技」という要素に分割しておこない、さらに最後の「演技」パートは、「身体から台詞を作る」から「台詞から身体を作る」へという段階的なステップを踏んだことが功を奏したようで、最後の発表で久々に面白い内容を見ることができました。講義の時間も設けて、出たとこ勝負でしたけど、却ってまとまった内容に仕上がったかと思います。そして、高校演劇フェスティバルは明日日曜が静岡東および常葉菊川の本番ですが、両校とも別役実の戯曲と格闘して、なかなか重厚な世界観を作り上げているので、見ていて爽快です。本番が本当に楽しみです。

そして先程、伽藍博物堂の座長、佐藤剛史さんの1人芝居『真夜中のセリヌンティウス/小林源太郎のリア王』を観てきました。これがまた実に面白かったです。後者は現代日本の状況に翻案された短縮版リア王ですが、観ていてふと、川上音二郎の壮士芝居(新派の最初)とはこんなテイストだったのではないか、と唸りました(『ベニスの商人』で、胸に墨でラインを引いたという音二郎の演出は、今考えれば絶妙ですな)。リア王が放浪する場面は、この1人芝居では、ホームレスの群れに入り込んだ主人公の、ネズミを長女次女と見紛う狂気によって表現されるのですが、コミカルなタッチの中に挿入されるこのシリアスな場面が見事でした。『真夜中のセリヌンティウス』も笑いました。おこがましい言い方ですけれど、演技がしっかりしているお芝居は、観ていて気持ちがいいですね。皆さんもぜひ御覧下さい。来週末までやっているようです。詳しくはこちら。

伽藍博物堂

大岡も負けてはいられません。VOJAゴスペルライブに挿入するミュージカル・パート『賢者の贈り物』の台本を仕上げました。脚色という作業は、原作をどこまで崩していいのかという線引きで、いつも迷いますね。もっとも私の場合は、かなり大胆に作り変えてしまうんで、原作通りの台詞なんてほとんど使わないんですが。まあ本質が外れてなければいいだろう、というか、むしろ変えちゃった方が本質を射抜くことができるという考え方で、ただそれでも、どこまで舞台向きに粉飾していいのかというのは悩みます。迂闊に「現代版」にはしたくないんで。フランケンズの中野茂樹さんの「意訳」のお芝居を一度観ましたけど、あれはあれで面白いんですが、私が採るべき方法ではないですね。解体し再構成した結果、演出家=劇作家の作為が丸見えになってしまうところがちょっと……。武田一度さんの歴史物が、江戸時代や明治時代に現代を透かし見るあのバランス感覚は絶妙だなあといつも思っていて、こちらはお手本ですねえ。そういう意味では、先程の佐藤剛史さんの1人芝居も、手本としたいものでした。

ちなみに、昨年のマーク・トゥエインにしても今年のオー・ヘンリーにしても、著作権が切れているんです。既成の翻訳も、参考にはしますが使用はしないので、上演に際してどこにも許可をとる必要がないんですな。これは最近、工夫している点です。大して集客に貢献してくれるわけでもないのに、原作者や翻訳者に払う1万円2万円って、本当に馬鹿馬鹿しいんですよすね、逆ギレですけどね(笑)。そこで発想を変えて、最近は、著作権が切れているものばかりを上演作品に選ぶようにしています。織田作之助もそうです。その方が、近代古典として風雪に耐えたものを選ぶことになるので、内容もいいんですよね。大学受験の現代文も最近は著作権にうるさくなっているので、明治時代の文学や論説ばかり出題すればいいんですよ。そしたら国語力もたちまち復活しますよ。

そんなわけで、芝居漬けの日々ですな。演劇なんて終わってんじゃん!!ってさんざん罵りましたけど、どうも東京でやっていたのが性に合わなかったみたいです。静岡にいると、なんだか芝居も悪くないと思えてきました。東京では芝居の嫌な部分ばっかり目にしますが、地方だと比較的、芝居の良い部分に触れることができるのは、なぜなんでしょうね。以前、京都に拠点を移そうとして失敗したことがありましたが、発想は間違ってなかったのかもしれません。

例えば、私が芝居に求めていたのは、ユーモアであってギャグではなかった、と言えると思います。東京の小劇場演劇はギャグ依存症ですね。残念ながら、静岡でもギャグに頼っている劇団はたくさんあるので(それにしては笑えないので)、ぶっちゃけ、早く限界を知ってもらいたいものです。ギャグならお笑いに勝てないですよ。だって、ルミネよしもとなんて行くと、滅茶苦茶レベル高いんだから。お客さんはテレビも見てますからね、下手なことやると比べられちゃいますよ。

ともあれ、こうやって色々刺激を受けているおかげで、私なりに静岡を拠点としてやりたいことが見えております。創作意欲がふつふつと沸いております。こんな心境は10代以来かもしれません。フランス滞在のおかげもあって、なんだかふっきれました。