私は経済については素人なので、頓珍漢なことを書いていたら教えて下さい。菅総理が「一に雇用、二に雇用、三に雇用」の具体策として法人税減税を主張しているようです。法人税減税がなぜ雇用につながるのかが、ちっともわかりません。雇用への影響なんてほとんどないんじゃないの、と私は思うのですが、以下その理由です。

現状で法人税が減らされたとして、そのぶんのお金はどこに回るか。株主への配当に回るかもしれませんし、役員報酬に回るかもしれませんが、老人にこれ以上お金をあげても、旺盛な消費意欲なんて持っていないわけだから、波及効果なんてほとんどないでしょう。単純に内部留保に回す企業も多そうですが、いずれにしても雇用にはつながりませんね。販売価格を引き下げて競争に勝とうとする企業も出てくるかもしれませんが、これなら、得をするのは消費者ということになります。ただそうやって家計で浮いたお金も、消費税増税で相殺されちゃうでしょう。むしろデフレを加速するだけだったりして。

では、社員の賃金を上げたり、雇用を増やしたりする企業は出てくるのか。非正規化を進めた労働市場は慢性的に供給過剰になっているわけで、賃金を引き上げる必要はそもそも存在しません。また、景気が上向かない限り、無闇に生産規模を拡大しても仕方がないわけで、雇用の〈量〉を増やすことにもつながらないでしょう。ただ〈質〉の高い中核正社員だけは企業としても手放したくないでしょうから、若干ボーナスを引き上げるような効果はあるでしょう。しかし、これを雇用対策とは呼ばないですね。ボーナスは、住宅ローンの返済に充てられるだけではないでしょうか。

そもそも、中小企業は赤字経営だから、法人税が減ったら多少バランスシートが改善するという程度のことで、波及効果を持ちうるとしたら大企業の場合でしょうね。大企業が減税で浮いた分で設備投資をおこなう場合にのみ、景気への波及効果を持ちますから、間接的に雇用対策にもなるとは言えるでしょう。ただ設備投資に回すといっても、販売市場を拡大できる見通しがない限り、限界がありますね。消費税増税で、国内市場は打ち止めではないですか。海外市場を相手にしている部門でのみ、設備投資にお金が回るかもしれない。

ただここで、そもそも小泉・竹中=菅・仙谷=経団連=霞ヶ関がかまびすしく主張している「法人税を下げないとグローバル企業は海外に出て行ってしまう」という前提に立ち戻らざるをえない。このあいだ某老舗大手メーカーの下請けの人に話を聞いたのですが、某大手は本音としては「現地調達・現地生産・現地販売」を一日も早く実現したいが、下請けとのおつきあいを尊重して国内生産体制を残しているだけだとのこと。老舗の大手ですらこうなのだから、既に生産拠点を海外に移しちゃった大企業は、たくさん存在するんでしょう。しかもこの円高ですから、減税されたお金が事業活動に資本投下されるとすると、海外での原材料購入や、海外での設備投資や、海外での労働力確保に使われることになるんじゃないですか。中国人やインド人の雇用対策にはなるかもしれない(笑)。

じゃあ法人税減税の国内における効果って何なのか。「本社機能だけは日本に残してくれ」っていう意味しかないように思います。「減税してやるから本社は残せ」って、まるでタックス・ヘイヴンですね。もうこれからの日本は、大金持ちが自宅と財産を置いておくだけの国家となり、一般国民は大金持ちによってたかって太鼓持ちをやれ、というメッセージかもしれません。しかし、これで経済が成り立つのは小国の場合でしょう。まあ、少子化だからそれでもいいということですかね。貧乏人の老人が金持ちの老人からお裾分けしてもらう金融国家。これが、菅総理が描く日本の将来像ですな(笑)。

結論。景気が上向いて国内市場が活性化しない限り、法人税減税は雇用に対する効果は持ち得ず、風が吹いても桶屋は儲からないと思いますが、どうでしょうか。供給側をいくら優遇したって、需要が生まれないんじゃね。ただ法人税減税と労働法制の強化をワンセットにすれば話は別ですが、それだけは絶対にやらないでしょう、菅総理は。エセ市民運動家だからね。