菅新政権に対する危機感。


いやはや、政局がとんでもないことになってきましたな。

鳩山辞任の最大の理由は「金融危機の米国が、みかじめ料をせしめる名目を確保するために、米軍を置きっぱなしにしていること」であって、それ以上でもそれ以下でもないはずですが。一度ヤクザに用心棒を頼むとロクなことがないですね。「吉田ドクトリン」とか嬉しそうにレトリックを弄している場合じゃなかったですね、戦後の日本人は。最近、白洲次郎を英雄視する論調がありますが、おかしいでしょう。

ところがニュースは、鳩山さんは米国によって罷免されたようなものだ、という正論など口にせず、鳩山辞任を政局の文脈でしか報道しませんね。「県外」を言ったことを評価する沖縄県民の声もある、というのが鳩山さんをフォローするキャスターの定番の台詞ですが、そうじゃなくて「国外、最低でも県外」って言ったんですよ。「国外移設は最初からただの理想論」「鳩山辞任の最大の理由は“政治とカネ”」ってのが、まるでコンセンサスみたいになってますけど、とんでもない情報操作ですね。

考えてみれば、麻生太郎はあの吉田茂の孫、鳩山由紀夫はあの鳩山一郎の孫ですからね。敗戦から65年が経とうとしていますが、なお私たちは「日米安保」の枠組を一歩も出ることができていない。昨年から今年にかけて、私たちは「吉田茂対鳩山一郎」という因縁の対決の平成バージョンを見ていたことになりますが、麻生さんも鳩山さんも、ともども無念だったことでしょう。麻生さんは中川昭一氏を失いましたし、鳩山さんは小沢一郎氏を道連れにしたようなものですから。

そして新内閣の顔ぶれは、仙谷に枝野に蓮舫ですか。これは、ブログ「世に倦む日々」の田中宏和さんも書いておられるように、自民党から民主党へと場を変えた、構造改革派によるクーデター以外の何物でもないですね。菅直人という人は、小沢に対する私怨だか何だか知りませんけど、いつの間にアメリカに魂売ったんですかね。まるで気がつきませんでした。このままいくと、国民新党との連立も解消されちゃうんじゃないでしょうか。亀井さんが最後の良心ですな。

で、この政局の動きの本質をどう見るかですが、要するに、輸出産業のBRICS市場へのシフトがうまくいっていないんでしょうな。「低価格・高付加価値」の商品供給が達成できるのは、先進国日本の輸出産業にとってはやっぱりアメリカ市場しかないですし、米ドル大暴落なんてことになれば日本経済も大打撃ですから、財界も米国の要求は呑まざるをえないんしょう。ただそのアメリカも不況に突入し、90年代以降の日本のように、「高付加価値」はどうでもよく「より低価格」へと需要はシフトしていくはずで、そうなると、多くの日本企業が競争に敗退するのも時間の問題ではないかと思われます。しかし、BRICSで中産階級が育って購買欲が高まれば、また勝機が巡ってくるのかもしれません。ただその場合でも、生産拠点は海外に移転し「現地調達・現地生産・現地販売」が常態化しているでしょうから、国内の産業空洞化は止められそうにないですな。菅直人が「福祉や医療は成長産業だ」と言い始めていますが、これは裏返せば、国内の中小製造業者や建設業者を保護する気はないというメッセージとも取れます。「転職しろ」ということですね。

従って、米軍が沖縄から完全撤退し、属国から脱する悲願を達成した頃には、我が国は、個人資産1400兆円を細々と取り崩す「内需縮小」の弱小シルバー国家に成り果てているかもしれません。いや1400兆円が残っていればまだしも、「もったいないから節約」を美徳とした挙句、不況が不況を産み、産業は育たず、米国に貸したカネは戻らず、郵貯も簡保もなぜか米国に巻き上げられ、ジジババが「こんなことなら貯めたお金は若い人たちに出資すればよかった」と後悔しても時既に遅し、という図すら目に浮かびます。

静岡県民である私は、平素、地方から都会への人材流出を嘆いているわけですが、それどころか、日本から海外への人材流出を嘆くべきなのかもしれません。いやいやそれどころか、100年後に日本という国家が存続しているのかどうか、それすら危ぶまれるような気がします。小沢・鳩山体制は、愛国者の百日天下だったんでしょうか……。

もっとも、私個人は、こうなるとますます創作意欲に火がつきますがね。古代ギリシア悲劇・喜劇の隆盛期は、だいたい、都市国家アテネが絶頂から衰退へと向かう時期に相当しています。ペロポネソス戦争に敗北したことで古代ギリシアの覇権はアテネからスパルタへと移動するわけですが、この戦争を横目で睨み、人類史に残る傑作『女の平和』を執筆したのが、私が尊敬するアリストファネス先生であります。アリストファネス先生を神棚に祀り、さっそく今年から、これまでとは違った戦い方を始めるつもりです。具体的なことはまだ書きませんが、頑張りますよ。