皆さん地震は大丈夫でしたかね。びっくりしましたね。大岡は東京におりましたんで大丈夫でしたけれども。

さて、私なりの視点で、政局について書いてみます。

「反共」でまとまっていた自民党が、円高誘導でレーガン政権を支援し実際に共産主義に勝利し、冷戦が終わってしまうと、とたんにその存在理由は失われてしまって、92年に「小沢の剛腕」でもって自民党は分裂、保守新党が乱立し、総選挙で自民党は下野、細川連立政権が成立し、続いて羽田政権が登場……という一連の事態が生じたわけですな。ところが保守新党なんてのは逆に「反自民」しか大義名分を持たなかったため、こちらも与党になったとたんにたちまち瓦解しましたな。そしてかつての敵同士であった自民党と社会党が連立するという前代未聞の野合内閣がとってかわり、リーダーシップ不在の村山政権が、阪神大震災とオウム蜂起に対処せねばならなくなるという最悪の状況に直面したわけです。阪神大震災の際に自衛隊の初動が遅れたというのはよく知られた話ですが、これはもう、与党の椅子を欲した社会党のエゴが引き起こした悲劇だったと言わざるをえません。その後弱小政党に転落したのも当然の報いだと思います。あのとき、せめて小沢一郎が首相であったら、死なずに済んだ人が何人もいたんじゃないかと感じましたな。

それはともかく、90年代に入ってから、日本の政党はイデオロギー的な争点を見失い、数合わせのゲームしかやっていないわけです。これから二大政党制の時代が来るなんて言われてますが、55年体制下の方が、社会党が勝つことはなかったとは言え、よほど二大政党って感じがしましたね。財界vs.総評ってことですが。そうこうしているうちに、小沢一郎の『日本改造計画』を丸々パクった小泉純一郎が徐々に力をつけ(官僚支配打破・官邸機能強化なんてのは、ぜんぶ『日本改造計画』に書いてあることです)、一方、小沢自由党は民主党に合流した。かくして与党も野党も新自由主義の巣窟になってしまった。アメリカのネオコンが、もともとは民主党リベラル派のユダヤ系知識人で、それが転向して共和党に入り込み、二大政党の双方に巣食った(by副島隆彦)のと似たことが、日本でも起きたということでしょう。私個人は自民党大分裂以来、日本でも数少ないイデオロギーに従う政治家(共産党は別として)ということで小沢一郎を支持していたので、彼が民主党に合流したときは、ああこの人も数合わせのゲームに参加するのか、と少なからず白けたことを覚えています。

よく言われることですが、民主党は政策で一致しているわけではなくて、「反自民」の一点で結束している野合政党ですから、以上の90年代以来のパターンで言えば、政権与党になったとたんに、たちまち数合わせのゲームに巻き込まれ瓦解するでしょう。細川護煕の目と鳩山由紀夫の目が似ていることも相俟って(殿様気質ってことですかね?)、かつての細川連立政権が想起されます。

小沢もずいぶん変わった、なんて話をよく聞きますけど、本当なんですかね。こういう基本的な構造は何も変わっていないような気がするんですけど、渦中にいる人たちはどこまでわかってるんでしょうね。下野した自民党は消えてなくなるなんて言う人もいますが、私はそんなに単純に事は運ばないんじゃないかと思いますね。まあ、腐っても自民党は、かつての「反共」に加えて「改憲」という明確なイデオロギーを綱領に掲げているわけなんで、その一点がある限り生き残るんじゃないか。もっとも、日本の保守知識人が総力を結集し、本来は改憲へと突き進むはずだった安倍内閣が、戦後最高のスカで終わったことを考えると、もう極右民族主義者だけが居残る弱小政党に転落するのかもしれませんけどね。

一方、経団連と連合の双方が民主党を支持する(by世に倦む日々)となると、これから誕生する民主党政権は、「正社員擁護」を密かな目標とするのかもしれません。しかし今や勤労者の3人に1人が非正規雇用、2人に1人が年収300万円以下という時代ですから、「正社員擁護」内閣の支持基盤は安泰ではないですね。政局がたちまち流動化することが容易に予想される、というのが結論です。